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ペチコートが持つ機能

ペチコートをご存知でしょうか。
衣服の下に着用されるので、普段はあまり目にする機会がない方もいらっしゃるかもしれません。
ここではペチコートが持つ機能とその役割について、解説します。
 
※「ペティコート」と呼ぶこともありますが、このコラムでは「ペチコート」で解説します。

ペチコートとは

裏地(衣服の内側に付いているツルツルとした生地)が付いていないワンピースやスカートなどを着用する際、その下に着用する女性用下着をペチコートと呼びます。

ペチコートの役割

➀透け防止
ペチコートの役割として最も知られている役割が、透け防止です。
薄い色や生地で作られた衣服の場合、試着室では気づかなかったのに下着や肌が透けてしまったり、逆光を浴びた時に体のシルエットが浮かんだりしてしまうこともあります。
下着や肌が透けてしまうと衣服のデザインを邪魔するだけでなく、自分が意図しない見え方で他人から見られてしまうことがあります。透ける心配がある衣服はペチコートを着用し、透けを防止しましょう。
 
②汚れの付着防止

汚れには外側から付着する汚れと、内側から付着する汚れがあります。
外側から付着する汚れの代表が食べこぼしやシミです。これらは目立つので意識されやすいと言えます。
一方、内側から付着する汚れの代表は、皮脂や垢です。夏場、汗をかきやすい時期であれば意識せざるを得ないと思いますが、あまり汗をかかない季節や快適な場所・環境では、ほとんど意識されることはありません。
しかしどんなに快適な環境でも、肌に接する部分には皮脂や垢が付着します。衣服へのそれらの付着を最小限に抑えるのも、ペチコートの役割です。
参考:汚れの種類


③滑りを良くして、摩擦を防ぐ

衣服には「生地同士の相性」があります。
例えば、着用するタイツとスカートの相性が良くない場合、着用中に摩擦を起こしスムーズな着用ができなかったり、スカートが上がってきてしまったりすることがあります。
さらに摩擦を受けやすい部分は毛玉や擦り切れなどが生じ、最終的には衣服が薄くなったり破れてしまったりする原因にもなるのです。
ペチコートは柔らかくツルツルとした生地で作られているため、摩擦がほとんど起きません。そのため、ペチコートを着用することで相性の悪い繊維同士の摩擦を防ぐことができるのです。
 

④制電・除湿機能

後に解説しますが、これはペチコートが持つ機能ではなく、ペチコートを作っている繊維が持つ機能です。つまりこの機能を持つ繊維で作られたペチコートは、着用中に摩擦で起きる静電気や衣服の中で湿気がこもるのを防いでくれます。
制電機能がない衣服をペチコートなしで着用した場合、衣服が身体にまとわり、体のラインをくっきりと浮かび上がらせてしまうこともあります。
これはアイテム(スカートやワンピース)でなく繊維が起因しているため、例えば薄手のワイドパンツなどでも起きる可能性があります。
 

⑤表地のシワを防ぎ、衣服を守る

意外と知られていない機能が、表地のシワを防ぐ機能です。
衣服は、着用での体の動きによって絶えず伸びたり縮んだりを繰り返しています。シワが付きやすい生地・付きにくい生地によって程度は変わりますが、シワの寄りやすい箇所は次第に生地が脆弱化し、最終的には裂けたり破れたりしてしまいます。
しかし体と衣服の間に1枚ペチコートがあると、ペチコートがシワを吸収してくれる(ペチコートが衣服の代わりにシワになってくれる)ため、衣服にあまりシワが付かずに済みます。
しかもペチコートはシワになりにくい繊維で作られているので、ペチコートにシワが残る心配はありません。
これは、表地が厚くしっかりした生地ほど起きやすい現象です。厚くしっかりとした生地の場合は透ける心配がないのでペチコートを必要に思わない方もいらっしゃるかもしれませんが、透ける・透けないを問わず、裏地の付いていない衣服にはペチコートを着用するようにしましょう。

事故事例紹介
事故事例
このスカートは某高級ブランドのスカートです。
比較的厚くしっかりした素材のスカートのため、ペチコートなしで長年着用されていました。
自宅で洗うことが出来ないため正しいケアをしないまま着用を続けた結果、定着化していたシワが裂けてしまったと思われます。
 

ペチコートの選び方

ペチコートは下着なので、他人から見えないように注意する必要があります。
合わせる衣服によって、ペチコートのデザインや色を選びましょう。
スカートやワンピースの丈を確認する
座ったり階段を上ったりすると、立っている時よりも裾が上がります。
その時ペチコートが裾から見えやすくなるので、ペチコートの上に着用する衣服の裾より5~10㎝短いペチコートを選びましょう。
ワンピースやスカートのデザインに合わせる
ペチコートにはスカートタイプ・ワンピースタイプ・キュロットタイプなど、様々なデザインがあります。ペチコートの上に着用する衣服のデザインに合わせて、タイプを選びましょう。
目立たない色を選ぶ
ペチコートは「縁の下の力持ち」的役割のため、もともと奇抜な色味のものはありませんが、ペチコートの上に着用する衣服によって色を選ぶ必要があります。
肌が透ける心配がある、白や淡い色の衣服の場合はベージュのペチコートを選びましょう。白い衣服の下に白や黒のペチコートを選んでしまうと肌は透けなくなるものの、ペチコート自体の色や形が浮き上がってしまいます。
逆に黒や濃色の衣服の場合は、黒を選ぶのが無難です。ベージュを選んでしまうと、万が一裾からペチコートが見えてしまった時に目立ってしまいますし、素材が薄い場合はペチコート自体が透けてしまうこともあります。

主なペチコートの素材

キュプラ
制電・除湿機能を備えた素材は、「キュプラ」という素材です。
自宅でのケアが難しいとされているキュプラですが、下着に分類されるペチコートは着用の都度洗濯を可能にするため、混紡などの工夫がなされています。
自宅でのケアは、ペチコートに付いたケアラベルを確認してください。
参考:化学繊維 キュプラついて
ポリエステル
ポリエステルは繊維の形状を簡単に変化させることができる繊維で、絹やキュプラに似た光沢を出すことができます。さらに元の形に戻ろうとする力があるのでシワが付きにくいという特徴も、ペチコートに適しています。
参考:合成繊維 ポリエステルについて

衣服を長く楽しむために

裏地のついていない衣服の場合には、必ずペチコートを着用するようにしましょう。またペチコートは皮脂や垢を吸収している下着ですから、常に清潔を保つようにしましょう。
なお、裏地のついていない衣服をペチコートなしで着用することは、衣服にシワを定着化させてしまうことになります。一度折り曲げた紙の折り目が元に戻らず、いずれ切れてしまうのと同じで、繊維もシワをそのままにしていると破損してしまうのです。
それを防ぐためにも、定期的にクリーニングに出して正しいメンテナンスを実施しましょう。
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